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大桑城跡の発掘調査で石垣を用いた中央通路を確認
曲輪群で両側面に石垣を用いた中央通路を確認しました
大桑城跡では昨年度に引き続き、曲輪群と伝「台所」で発掘調査を実施しました。
曲輪群では、美濃国守護土岐氏が築いた石垣をもつ中央通路を確認しました。また、中国産の磁器や国産の陶器、素焼きの皿(かわらけ)など、350点以上の多量の遺物が出土しました。また、伝「台所」では、池の縁辺に沿って敷かれていたと考えられる黒色の玉石の広がりを確認しました。
今回の発掘調査によって、守護土岐氏の城づくりがさらに明らかになってきました。
※この事業は、加藤精工株式会社、TCB東京中央美容外科からの企業版ふるさと納税での寄附を活用して実施しました。
調査の概要
調査期間:令和4年8月29日(月曜日)から12月22日(木曜日)まで
※遺構保護のため、調査後に埋め戻しをしたことから、現地で石垣や庭園などの遺構を見ることはできません。
調査場所:曲輪群と伝「台所」(次の地図などを参照)
調査面積:約70平方メートル
発掘調査の場所(曲輪群と伝「台所」)
発掘調査の場所(曲輪群と伝「台所」) [その他のファイル/59KB]
立体模型で見る発掘調査の場所
立体模型で見る発掘調査の場所 [その他のファイル/1.08MB]
調査の目的
大桑城の中心部分と考えられる曲輪群と伝「台所」の構造と性格の確認
曲輪群の調査成果
曲輪群で、両側面に石垣を構えた中央通路を確認しました。確認された通路は直線的で、曲輪群の中央を通るもので、通路幅は約2.2mあります。通路をはさんで東側の石垣は、延長約5.3m、高さ約0.6m、西側の石垣は、延長約1.0m、高さ約0.7mの規模がありました。東側の石垣は、幅50~60cm程度の大きめの石材を使用し、西側の石垣背面には、排水のための「裏込め石」が充填されています。
また、中国産の磁器や国産の陶器、素焼きの皿(かわらけ)など、350点以上の多量の遺物が出土しました。中央通路をはさんで東西の曲輪では、出土する遺物の様相が異なることも確認でき、曲輪の使われ方に違いがあった可能性も考えられます。
中央通路と両側面の石垣
通路東側の石垣
通路西側の石垣(小さい石は裏込め石)
中国から輸入した磁器(左から染付、白磁、青磁)
国産(瀬戸・美濃地方)の陶器 皿
伝「台所」の調査成果
伝「台所」では、池の縁辺に沿って敷かれていたと考えられる黒色の玉石の広がりを確認しました。また、石垣の面をそろえ、横目地を通すという丁寧な積み方をした石垣も確認しています。
確認された石垣
今回の発掘調査で分かったこと
曲輪群では、両側面に石垣をもつ中央通路を確認しました。土岐氏は曲輪群の中央に直線的な通路をつくり、さらに両側面を石垣によって構えることで、守護土岐氏としての権威を示そうとしていたと考えられます。また、多量に出土した遺物は、曲輪群の居住性の高さを物語っているようです。しかも、曲輪ごとにその様相が異なることから、曲輪の使われ方に違いがあったことも分かりました。土師器皿の出土が大半を占める通路西側の曲輪では、土岐氏やその家臣たちが酒宴の席を楽しんでいたのかもしれません。
伝「台所」では、池の縁辺に敷かれた玉石や、装飾的な石垣など、庭園の構造がさらに明らかになりました。
土岐氏は、一国を治める守護として、文化的で力強い城づくりを大桑城で行っていたことが分かりました。