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【移住者】カワノリがつなぐ、土地と人、これからの暮らし。

記事ID:0057181 更新日:2026年9月24日更新

Yさん(カワノリカンパニー代表)
(40代)美山地区(名古屋市から移住)

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小さなきっかけから始まった、山県市とのつながり。

 山県市と最初につながったのは、2018年のこと。のちに夫となる山県市在住の男性と名古屋で出会い、彼の案内で山県市を訪れた時、円原川のカワノリ(川海苔)について話を聞いたことがきっかけでした。カワノリは川で育つ藻類で、かつては北山地域の特産品として知られていました。しかし、環境の変化で生育量が減少し、採取する人も減って、カワノリ食文化が忘れられつつあったのです。「特産品として復活できたらいいけれど、何をしたらいいのか分からない」と聞き、大学の研究室で文化人類学の調査研究をしていた経験から、少し調べてみることにしました。調べた成果をまとめて送り、自分ではそこで終わるつもりでしたが、それを手がかりにカワノリの実験をしてみようと話が展開し、山県市とのつながりを深めていくことになりました。

 その後、5年ほど山県市へ通いながら地域の人とのつながりを深め、結婚を機に名古屋市から移住しました。移住前から繰り返し足を運んでいたため、全く知らない土地へ移る感覚ではなく、それまで築いてきたつながりの延長に現在の暮らしがあります。

カワノリ食文化:地域に残る恵みを次世代へ。

 現在は、地域の人と私たち夫婦で「カワノリカンパニー」という任意団体を立ち上げ、円原川のカワノリの保護・調査・持続的な活用に取り組んでいます。特産品として復活させたい、と始まったこの活動ですが、現在は通信販売をしたり、飲食店へ卸せるところまで活動が進みました。

 自然のものなので、雨量や雨のタイミングによって生育量が変わり、なかなか安定した収穫が見込めないのが難しいところです。それでも、地元の方への聞き取り調査や、カワノリを増やすための実験、カワノリを使ったスイーツの開発など、この地域に残る大切な恵みを生かすための挑戦を続けています。

 最近は、啓発活動にも力を入れています。この夏は、市内の小学生を対象にカワノリについて伝える機会がありました。山県市で暮らしていてもカワノリを知らない人は多く、もちろん子どもたちも同様です。全国的にも減少している希少な資源がここにあると知ってもらうことで、地域の自然や暮らしへの思いを育んでほしいと願っています。

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豊かな自然、こどもは地域の宝。

 山県市で子育てをする中で感じるのは、自然の豊かさと、人との距離の近さです。こどもが産まれたことで、よりそれを実感するようになりました。自然をからだで感じられる環境は、都会では得にくいものです。窓からの景色や地域の行事など、日常の中に季節を感じる場面がたくさんあります。夕暮れ時、家族と犬の散歩をしながら眺める山並みと空のグラデーションは、特にお気に入りの風景です。

 そして何より心強いのが地域の人たちの存在です。夫婦で北山に関わってきた背景から、地域の人々は結婚を親族のように喜び、妊娠中も気にかけてくださって、生まれてからは孫のようにかわいがってくれます。こどもは地域の宝、ということばを肌で感じています。身近な人とのつながりに支えられる事が多く、地域で子育てをする心強さにつながっています。

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​カワノリを通して、この土地の暮らしを伝えたい。

 カワノリは、単なる地域の特産品ではなく、地域の人が清流のほとりで暮らしてきたことを表す象徴のようなものだと感じています。川の水を生活に使い、川で魚やノリを取り、川で遊ぶ。カワノリの話を聞いていると、川とともに生きる営みが見えてきます。カワノリをたくさん取って売ること以上に、カワノリがある暮らしそのものを次へ伝えることが、私たちの目標です。

 カワノリの調査をしている時、ふと気づいたら光芒に包まれていたことがありました。川霧が流れ、光の筋がきらきらとゆらめく様子があまりにも美しくて、思わず手を止めてしまいました。自然に圧倒されるような風景は、この土地で暮らす大きな魅力だと感じています。

 もし、ささやかでも山県市に心惹かれる何かがあるなら、充分この土地へ移住する理由になると思います。不便に見える場所ですが、少し動き出すと、あっというまにいろんな人とつながる、豊かなところです。小さなきっかけから山県市との関わりを深めてきたからこそ、これから移住を考える人へ「ぜひやりたいことに挑戦してください」と伝えたいです。

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 (令和8年9月掲載)