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晩秋…「伊自良連柿」の風景を撮りに行く

記事ID:0008019 更新日:2020年2月18日更新

「伊自良連柿」の風景を撮りに行く

オレンジ色のカーテンが伊自良の里山を彩る

柿の画像

山県の秋を代表する風景ですが、年々貴重なものになりつつあります

 

山県市伊自良(いじら)地区の山々が秋のさまざまな色彩に染まる頃、まるでオレンジ色のカーテンを掛けたような風景が、農家の軒先を彩ります。

これは山県市を代表する特産で「伊自良大実柿(いじらおおみがき)」という渋柿。近江地方から持ち込まれたのが「おおみ」の名の由来といい、大正~昭和初期に栽培が本格化したということです。干し柿を吊るす風景が「連柿」とよばれ、「伊自良連柿」は山県の秋の代名詞となっています。

この「伊自良連柿」、まず柿の皮をむき、竹串に3つ挿した後、藁で10段編んで作られます。秋も深まる11月中旬に軒先に吊るされ、12月になると家屋の中へしまわれます。店頭に出回るのは12月中旬から年末頃。「伊自良連柿」は贈答品や縁起物としても人気なので、お正月にはコタツの上にのって山県の人々に楽しまれているのでしょう。

渋柿の渋みを抜く「連柿」の技法で甘い干し柿を量産

柿の画像

子どもの頃、生の柿を甘柿なのか渋柿なのかもわからないままにガブリと食いついてしまった経験はありませんか? それが渋柿だったときの衝撃は忘れられないものです。まるで海岸のサラサラの砂を口いっぱいに詰め込んでかみ砕いていたような感覚…。

「連柿」とは、その渋柿を天日にさらして渋みを抜き、甘い干し柿を作る技法のひとつ。古くから東アジアで食べられてきたこの干し柿、科学的に説明しますと、乾燥させることで渋柿の可溶性のタンニン(カキタンニン、シブオール)が不溶性に変わり、(渋抜きされて)渋味がなくなり、元からあった甘味がより強く感じられるようになる…ということ。

糖度は66%にもなるといわれます。甘柿を干したものよりも、渋柿の方がずっと甘くなるというのは自然の神秘ですね。

 

高齢化によって激減してしまった連柿農家

柿の画像

昔は伊自良地区に出かけると、伊自良連柿があちこちの農家で見られました。昭和30年頃には1農家あたり2000連も連柿が生産されていましたが、農家の高齢化によって現在の生産量は減少し、生産が盛んだった山県市平井地区では1000本の柿の木の内400本が放棄されたままだといいます。

12月の初め、平井地区で連柿を家にしまい込んでいるおばあさんの姿を見かけて声をかけてみました。「この家に嫁に来た頃にはあちこち連柿がいっぱいで、そりぁ、きれいだったよ。でも今は平井でも、連柿を作っとるんは4~5軒くらいだろうねぇ。平井の風景が淋しくなったよ」とおばあさんは言います。おじいさんも姿を見せてくれました。「こちらではいつ頃から連柿を作っているのですか」という質問には、「さあ、子どもの頃からずっと作っとるからわからん。しかし、うちもあと1~2年でやめてしまうじゃろな」というお返事。

 

伊自良大実柿のおいしさと里山の風景を守る

風景画像

「連柿」は山県市を代表する美しい風景…。なくなってしまうのは本当に淋しいものです。全国各地で同じように伝統的な地域の味や風景が貴重なものとなりつつある時代、なんとかこの風景をいつまでも見に行ける山県であってほしい。

もちろん「伊自良大実連合会」や、山県市などを代表とするさまざまな組織が伊自良連柿を残すための活動を行っています。私たちも「伊自良連柿」を見て帰るだけではなく、買って、味わってみて、「美味しく」応援したいですね。「柿BUSHI」では柿渋染め体験を開催しています。

また「てんこもり農作物直売所」「ふれあいバザール」などでは年末から、その年できたての干し柿商品を店頭に並べますので、ぜひ味わってみてください。

 

伊自良連柿のアクセス・基本情報

伊自良連柿(いじられんがき)

住所 山県市平井地区周辺

交通 JR岐阜駅から車で50分 ※個人宅になるので遠景のみ見学可。